退職金と年金分割
退職金・年金分割
退職金
夫婦の一方の退職金については、それが財産分与の対象となるか問題となります。既に支払われた退職金と将来支払われるであろう退職金とで扱いが異なります。
離婚までに既に支払われている退職金については、婚姻期間に対応する部分が財産分与の対象となります。「婚姻期間に対応する部分」の考え方には、様々な考え方がありますので、詳しくは弁護士にご相談下さい。
将来支払われるであろう退職金については、近い将来、その支給を受ける高い蓋然性がある場合には財産分与の対象となるとするのが多くの考え方といえます。分与の時期(離婚時か退職金支給時か)や、分与額の算定方法には様々な考え方があります。
退職金の中には、定年まで勤めなくても、勤務年数に応じて支給される場合もあります。このような場合には、その特性に応じた配慮が必要とされるかもしれません。
年金分割
夫婦間の給与に格差がある場合、老後に支給される年金額に差が生じ得ます。年金分割はこの格差を是正するため、いわば多い方から少ない方へと分割しようとする制度です。もう少し詳しく説明致しますと、例えば厚生年金の場合、年金額は現役時代の給与や賞与の平均額を基礎として算定されます。そうすると、夫が会社員で妻が専業主婦のような場合、妻自身の収入はないので、受給できる年金はないということになりかねません。これでは離婚後に単身となった高齢女性の生活が維持できないことになります。このような問題を解決するために設けられた制度ともいえます。
年金分割の基本的な考え方を上記の例を使って説明します。まず、そもそも老齢厚生年金の年金額は「標準報酬」に基づいて算定されます。「標準報酬」というのは「給与及び賞与の額の平均額に、被保険者であった期間と一定の係数とを乗じて算出したもの」を言います。そして、「年金分割」というのは、婚姻期間中働いていた夫の標準報酬の一部を、婚姻期間中働いていなかった妻の標準報酬とすることを意味します。
対象となる年金は、①厚生年金、②国家公務員共済年金、③地方公務員共済年金、④私立学校教職員共済年金となります。厚生年金基金、国民年金基金、確定給付企業年金、適格対象年金、確定拠出年金等については対象となりません。
年金分割された年金を受給するためには、自身の保険料納付期間等の合計が25年以上でなければならず、この要件を充足しない場合は、年金分割を受けても受給することはできません。上述したように、年金分割というのは、妻自身が年金を受給するにあたり、その年金額の算定に際し、夫の標準報酬の一部を妻自身の標準報酬とするというものだからです。
年金分割は外国人の方も受給することはできます。ただし、自身の保険料納付期間等の合計が25年以上でなければならないこと等は、日本人と同様です。
年金分割の方法には、合意分割と3号分割があります。