外国人でも日本で裁判ができますか?
渉外離婚
私は日本に住んでいる中国人ですが、夫も中国人で日本に住んでいます。私達は中国で結婚して、日本に来ました。夫とは離婚したいと思っています。しかし、夫は離婚に応じてくれません。離婚するために中国に戻るのは大変です。そこで、日本の裁判所で離婚することはできますか。
日本の裁判所で離婚するためには、中国人であるあなたと、同じく中国人であるあなたの夫の離婚について裁判をする権限が日本になければなりません。そして、被告(訴える相手)の住所が日本にあれば、日本に裁判する権限が認められます。ですので、あなたの夫の住所が日本にあれば、日本の裁判所で離婚することができることになります。では、夫は、どの位の期間日本に住んでいれば、日本に住所があるといえることになるのでしょうか。はっきりとした法律がある訳ではありませんが、日本に1年未満しか住んでいない場合でも、日本に住所があると認められる可能性があるとする考え方もあります。
ここまでお話しすると、あなたは、次のような疑問を持つかもしれません。「私達は中国で結婚手続きをしたので、離婚手続きも中国でしなければならないのではないか?」。そうではありません。あなた方の結婚が、日本の法律から見て有効に成立しているのであれば、被告(夫)の住所が日本にある場合は日本の裁判所で裁判できます。日本の裁判所では「調停前置主義が適用されますので、本国法の調停手続きの定め如何にかかわらず、まず、調停申立てを行うことになります。なお、中国婚姻法には訴訟外調停制度が存在しますが、この制度は、離婚にとっての必要的手続きではない点、及び、同調停が成立したとしても婚姻登記機関においてなおも協議離婚と同様の登記手続を経なければ法律上の離婚とはならないとされている点で、我が国の調停離婚とは大きな差異があります。
調停で話し合いができればよいのですが、調停中に夫が中国に帰ってしまって、もう、日本には戻ってこないといっている場合はどうなるでしょうか。それまでに、手続きが相当程度進行していて、離婚を認めるか否か等について裁判所が判断できる場合で、夫の中国での住所がわかっていて、書類を送ることができるような場合には、裁判所が調停に代わる審判をすることにより離婚することができます。しかし、夫の中国での住所が不明等の場合は、裁判所は審判しないことがあります。その場合は、あなたは裁判所に離婚の訴えを提起することになります(夫が行方不明の場合は、あなたは日本の裁判所に訴訟を提起することができます。)。本当に夫が中国に出国したか否かは弁護士法で定められた手続きを利用することにより調べることができます。その調査により出国記録がないという場合は、実は、夫は日本国内にまだいるということになります。その場合は、日本の裁判所で訴えを提起することは何ら問題ありません。