面会交流調停について
- 面会交流
面会交流調停における従前の実務の運用について
従前の面会交流調停の実務は、「面会交流が争点となる調停事件の実情及び審理の在り方‐民法766条の改正を踏まえて」(家裁月報64巻7号1頁・平成24年)の影響を受けてか、面会交流原則実施論であるとされてきました。
同論文においては「非監護親との交流を継続することは子が精神的な健康を保ち、心理的・社会的な適応を改善するために重要である」ことが強調され「面会交流は子の健全な育成に有益なものである」から「子の福祉の観点から面会交流を禁止・制限すべき事由(面会交流の実施がかえって子の福祉を害するといえる特段の事情)が認められない限り、面会交流の円滑な実施に向けて審理・調整を進めることを基本方針としている」としていました。
そのため、実務においては、
①別居親が面会交流の申立をした場合、子の福祉を害する特段の事情が認められない限り、別居親との面会交流を実施すべきである、
②面会交流は実施されるのが当然であるから、
①の「面会交流を実施することにより子どもの福祉を害する特段の事情」は面会交流を否定する者が主張立証すべきである、というような運営がなされてきたと言われています。
従前の実務の運用に対しては、
面会交流ありきの運用であり監護親への配慮を欠いているとの批判がありました。
最高裁平成12年5月1日決定
(民集54巻51号607頁)は、「家庭裁判所の実務において面会交流権といわれているものは、父又は母が他方に対して、子どもとの面会をさせるように求めることができる権利ではなく、父又は母が他方に対して、子ども監護のために適正な措置を求めることができる権利である」と判断しています。面会交流が親の権利でないとすると、面会交流原則実施という結論は、当然には導けないとすることもあり得ます。
そこで、東京家庭裁判所は、実務の運用の見直しをしました(「東京家庭裁判所における面会交流の調停事件の運営方針の確認及び新たな運営モデルについて」家庭と法と裁判26号129頁:令和2年)。具体的には、①面会交流の調停にあたっては、監護親・非監護親のいずれにも偏らない「ニュートラル・フラットな立場」(先入観を持つことなく、ひたすら子の利益を最優先に考慮する立場)で臨む、②面会交流を実施することにより子の利益に反する事情があるかどうかについて、子の状況、双方の親の状況、子と双方の親との関係、親同士の関係、子と双方の親を取り巻く環境等をめぐる事項を丁寧に聴取する、③聴取した結果を総合的に考慮し検討する、としています。
「子の状況」としての「子の意見(意向)」として
聴取の際に、子どもが、「非監護親に会いたくない」との意見を述べることがあります。同居期間中は、非監護親と仲良く過ごし、親子関係に何らの問題もなかったにもかかわらず、
連れ去り等で会えなくなり、連絡がとれないまま、ある程度の時間が経過した場合に、何故か、子どもが、非監護親に対して敵対的になってしまう場合もあります。面会交流の調停を申立てたことをもって、監護親が、子に対して「非監護親が子に対して裁判してきた」との説明をして、子vs非監護親の対立構造を煽っているのではないかとの疑いを感じることもあります。あるいは、いつの間にか、監護親側によって、非監護親が子どもを虐待していたことにされてしまう場合さえもあります。子どもの心情は如何ばかりかとの思いを抱くこともあります。