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別居・離婚した場合、家に住み続けることができるでしょうか

1 ご相談例

「夫名義の家に住んでいましが、夫が、離婚すると言って家を出て行ってしまいました。夫からは『離婚に応じろ、俺の家だからお前は家から出ていけ』と言われています。家は夫名義なので、やっぱり出て行かないといけないのでしょうか。」このようなご相談を妻側から受けることは間々あります。結論から言うと、原則として家を出て行く必要はありません。正確に言えば、原則として夫の明渡請求は認められません。

(1)普通に考えてみると・・・

夫が別居しなければ妻は家に住み続けることができたのに、夫が勝手に家を出て行ったら住め なくなってしまうというのはおかしい感じがします。

(2)法律的には・・・

これを法律的に少し詳しく説明してみます。夫の請求は、法的に構成しますと、家を占有している妻に対する所有権に基づく明渡請求となります。この請求は、占有者の占有が占有権限(占有することができる法的根拠)に基づく場合は認められないことになります。上記の例の場合、妻の家の占有には占有権限が認められます。すなわち、夫婦は婚姻中、同居義務を負うので(民法752条)、夫には妻を同居させる義務・妻と同居する義務がありますが、それと表裏一体のものとして、妻は同居する権利・義務があります。この「同居する権利・義務」が占有権限となります。結局、夫の妻に対する所有権に基づく明渡請求は認められず、妻は家に住み続けることができます[婚姻と離婚、日本評論社、168頁参照]。もっとも、妻からの虐待・暴力に耐えかねて夫が家を出て行ったような場合には、例外的に、夫から妻に対する家の明け渡し請求は認められるとされています(同169頁参照)。

2 財産分与未了の場合

では、上記の例を少し変えて、「離婚したが財産分与未了の場合」には、妻は家に住み続けることはできるか考えてみます。

(1)同居義務について

離婚した以上は、夫婦間の同居義務は消滅します。したがって、妻は「同居する権利・義務」という「占有権限」を失いますので、家に住み続けることは不法占拠になってしまいます。その結果、原則として、夫からの妻に対する家の明渡請求が認められることになります。しかし、離婚したら直ちに家から追い出されるというのでは、妻は苛酷な状況におかれることになります。

(2)裁判例

この点に関する裁判例としては、財産分与申立事件と平行して明渡請求を求めていた事案につき、財産分与請求権に基づく婚姻住居の潜在的持分は、潜在的、抽象的であるが、財産分与申立事件の審判中に明け渡しを求めることは、財産分与申立事件の手続外で婚姻住居の帰趨を決することを求めるものであり、妻の潜在的持分を不当に害する行為であるとして、明渡請求を権利濫用として認めなかった例もあります(もっとも、この事案では、妻から夫に賃料相当額が支払われていました。)。

(3)学説

学説では、①「夫婦は婚姻期間中、その家に共に居住する」との合意をしているとして、この合意に基づいて使用貸借関係(家を無料で利用できる権利)が認められるとしたり(ただし、財産分与時又は財産分与除斥期間満了時まで)、②ローマ法のプレカリウムに相当する生涯無償利用権が認められるとする考え方が提唱されています(住居の提供は、婚姻という身分関係・権利義務関係にある夫婦相互が、その義務を具現するために為さざるを得ない財産的処分行為(合意)である。婚姻が終生にわたる結合体ということから返還義務を予定していない。合意に基づくものであるから、身分関係の消長と運命をともにしない。したがって、婚姻の解消によって無償利用権は当然には消滅しない。少なくとも財産分与手続までは存続するし、財産分与請求期間を徒過した場合や、財産分与手続の中で妻の居住利益について格別の配慮がなされなかったときでも、独自の利用権の解約問題として、居住継続の必要性等を勘案して、その消長が判断される。このような所有権に対する拘束は、所有配偶者が婚姻住居として提供したという行為(合意)の内容として内含されている[以上(1)から(3)につき、上掲書177~180頁参照、「不動産無償利用権の理論と裁判」信山社、岡本詔治著、312~313頁参照]。

3 財産分与後

では、財産分与により妻は家に住み続けることができるでしょうか。①財産分与により、妻が家の所有権を単独で取得することになった場合や、②家に、妻の為に賃借権等の利用権が設定されたような場合は、妻は家に住み続けることができます。ただ、多くの場合、家のローンが残っているので、その処理について難しい問題が出てきます。この点については、別の機会に触れることができればと思います。

監修

河合・藤井法律事務所

代表弁護士河合基裕

法律事務所に相談に来られる方は、思わぬトラブルに巻き込まれ、不安を抱えておられることと思います。当事務所では、ご相談者さまとの信頼関係を大切にし、ともによりよい解決を目指して参ります。 お力となれるよう精一杯、務めて参りますので、よろしくお願い申し上げます。

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