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コラム

財産分与について

  • 離婚全般

第1 意義

1 定義

財産分与とは、例えば「夫婦の一方が婚姻関係の解消に伴って、離婚そのものを理由に他方に請求できる財産的給付」(「事例解説 離婚と財産分与」3頁、青林書院、松本哲弘著)とか、「夫婦が離婚した場合に、その一方が、婚姻中に形成した財産を清算するため
に、その分与を求めること」(「離婚に伴う財産分与」3頁、新日本法規出版、松本哲弘著)と説明されています。
 

2 性質

婚姻中に夫婦の一方が取得した財産は、他方配偶者の協力等がなんらかの形でそれに還元されているのであり、したがって、その財産は、実質的には夫婦の共有とみるべきものであるから、離婚に際してこれを清算するというものです。
債権法的には持ち分の取戻しに類似します(東京地判昭和32年8月24日判決)。
換言すれば、妻は、夫が婚姻中に取得した財産に対してもともと共有持分をもっているので、それを取り戻すということになります。
 

3 離婚による慰謝料との違い

(1)配偶者の有責性は必要ありません。
(2)当事者が請求した額以上の給付額等を裁判所が認定することも可能とされています(財産分与は非訟手続であり裁判官の裁量によって決まる部分もあります)。
(3)給付内容は金銭以外でも可能とされています。
 

第2 財産分与の対象

条文の文言では、配偶者の「協力によって得た財産」(民法768条3項)と規定されています。
ですので、例えば、婚姻前から有していた財産や、婚姻中であっても配偶者が相続や贈与によって得た財産は、「配偶者の協力によって得た」とはいえない基本的には財産分与の対象にはならないとされています。
 
「財産」としては、現金や預貯金が思い浮かびますが、これだけに限られず、保険の解約返戻金、不動産、自動車、株式、退職金、確定給付企業年金、確定拠出年金、個人年金財形貯蓄、投資商品等も対象となり得ます。
 
夫名義であろうが、妻名義であろうが、夫婦間で婚姻中に形成された財産は財産分与の対象となります。
この点、例えば、夫の中には「専業主婦である妻名義の保険の保険料は、会社員である自分が稼いだ給料から肩代わりして支払っていたから、その解約返戻金は全部自分のものだ」というような事を言う人も散見しますが、これは間違いです。
給料は共有財産となりますので、共有財産たる給料を原資とする保険料によって形成された解約返戻金も共有財産となります。
 
子ども名義の預金については、財産分与の対象となるとする考え方と財産分与の対象とならないとする考え方があります。
裁判例も分かれているようです。
金額の多寡にもよりますが、子どもの将来の為のお金であれば、お子様に残してあげればよいのではないかとも思いますが、ご夫婦間の信頼関係が失われている状況ではなかなか難しく、特に子供と同居している親に不信感を抱いている別居親の方から、財産分与の対象とすべきことを強く主張される例が散見されます。
子への贈与の意思が明確であれば子の財産となりますが、不明確な場合は、実質的に夫婦に帰属するかどうかは、その形成の趣旨・目的、管理状況等に照らして判断されます。
実務的な事前の手当としては、子名義の財産は、子のものである旨の合意書を作成しておいて財産分与対象財産から外すことも考えられます。
お年玉やお祝い金についても資料を残しておく必要があります。
ありがちなのは、一旦親が現金で受け取った状態でそのまま手元に保管しておいて、数ケ月後に通帳に預け入れるというような場合です。
3月や4月に預け入れているものにつき、実は月に貰ったお年玉です、と主張した場合、裁判所の理解が得られるかは注意が必要かもしれません。
 

第3 財産分与の期間

離婚後5年に伸長されました。
 

第4 財産分与の割合

原則2分の1とされています。
今般の改正法は、その旨が明らかにされました(768条)。
 

第5 財産分与基準

財産分与を巡る紛争において、一方当事者が共有財産を浪費しているような場合に他方配偶者が納得いかないとして問題が拗れることがあります。
例えば、一方の配偶者がギャンブルや遊興費でお金を沢山費消していたために生活費が圧迫され、他方の配偶者が節約して倹しく生活していたような場合、財産分与に際しては、節約して生活していた配偶者からすれば、相手が浪費等により財産を食い潰さなければ、もっと財産があったはずなので、その分を考慮してもらいたいという思いを抱くことがあります。
お気持ちとしては、そのような思いを抱かれることは十分理解できますが、法的な枠組みとしては、財産分与はあくまでも、基準時(多くの場合は別居時)に残存している積極財産(プラスの財産)を対象としますので、基本的には財産分与の枠組みで解決することはとても難しいということにならざるを得ません。
 

第6 精算

また、配偶者の一方が、同居中に、自分のお小遣いの中から、配偶者との外食代や家族の旅行代を負担したので、その分を財産分与の際に精算してもらいたいということを希望される例もあります。
夫婦関係が上手くいっているときは取り立てて問題としていませんでしたが、いざ離婚という局面で、このような請求がなされることがあります。
しかし、このような主張は、法的には、例えば贈与であると評価されるなどして、なかなか認められない傾向にあります。
 

第7 特有財産と共有財産が混合した場合の扱いについて

婚姻前から有する預貯金に婚姻中に取得した収入が混じり合った場合、よくあるのは、婚姻前から給与の振込先口座となっている通帳を婚姻後もそのまま給与の振込口座として使用し続け、その口座を光熱費やカードの引き落とし口座としているような場合です。
この場合、①基準時の残高から婚姻時の残高を控除した金額を財産分与の対象とするとする考え方や、②特有財産である預貯金と婚姻中取得した収入が混じり合った場合、その時点で特有財産は存在しなくなった、あるいは夫婦財産形成のために全額費消されたとして全体を財産分与の対象としつつ、婚姻時の特有財産の額を、寄与で考慮するという考え方があります(「離婚に伴う財産分与」90~91頁、新日本法規出版、松本哲弘著)。
婚姻後に一度も払い戻しや引き落としがなく、増加しただけの場合は、増加額を財産分与の対象財産とすることに問題はないかもませんが、増減を繰り返している場合には、別の考え方をする必要があるかもしれません。
例えば、婚姻時の残高が100万円で、その後、増減を繰り返し、最低額が50万円になった後、別居時の残高が80万円になった場合、財産分与の対象額を別居時残高80万円と最低額50万円の差額である30万円とする考え方もあります(ケース研究329号115頁~116頁・蓮井俊治著)。
もっとも、最低額50万円が別居時までに80万円に増加するに際し、共有財産のみが増加した場合と、特有財産(親からの贈与等)によって増加した場合とで算定方法が異なるかは別途、検討する必要があるかもしれません。
これまで見てきたように「混入」が生じた場合や、「残高の増減」が生じた場合は複雑な問題に巻き込まれてしまいます。
ですので、特有財産については、生活費等とは全く別の口座で保管・管理しておくことも検討する必要があるかもしれません。
また、婚姻前の預金について通帳を保管していればともかく、通帳を紛失しているような場合は要注意です。
なぜなら、基本的には金融機関から取り付けることのできる取引履歴は10年前までのものになりますので、それ以前のものは取り付けることができないからです。
 

第8 住宅ローンが残っている不動産について

財産分与は、基準時に残存している積極財産(プラスの財産)を離婚時に清算するものです。
したがって、不動産の評価額とローン残額を比較して、ローン残額が不動産の評価額を上回っている場合は消極財産とされ財産分与の対象とはなりません。
逆に不動産の評価額とローン残額を比較して、不動産の評価額がローン残額を上回っている場合は、その差額が財産分与の対象となります。
 
今までローンの支払いは全て婚姻後の収入等で賄ってきたという場合は、上記のような考え方で基本的には問題はないと思料されます。
しかし、例えば、頭金等の支払いに婚姻前からの預貯金を充てたとか、親からの贈与で頭金を支払ったというような場合には、特有財産部分と共有財産部分の算出や財産分与対象部分の認定がより複雑となります。
しかも、その具体的算定方法は法律等で決められている訳ではなく、様々な方法が提唱されています。
なお、例えば、親からの援助という場合、当然ながら客観的資料が重要となります。
口座への振込の記録や贈与税の税務署への申告等の控えなどが保管しておくとよいかもしれません。
念書や契約書を作成しても、親子間のものであることを考慮すれば、どれだけ有意なものとされるかは慎重に検討する必要があるかもしれません。
現金手渡し等の場合は、そもそも親からの援助があったかの立証そのものがとても困難となりかねません。
要するに、「金額」と資金の「出」と「入」が客観的資料から明確になっていなければならないということです。
世上、往々にして「私の親から頭金を出してもらったことを相手は知っているはずだ」とか、「相手は知っているはずなのに争うのはおかしい、許せない」といった主張を押し出される方もいますが、資料がない場合は、その主張が認められかは予断を許さないということになります。
 

第9 資産の開示命令制度の新設

財産分与の審判・調停や、それが問題となる離婚調停において、裁判所が必要と認めるときは、当事者に対し、その資産の状況、財産の状況に関する情報の開示を命ずることができ、それに従わない場合は過料10万円の制裁が定められました。
 
以上につき参考文献「判例にみる離婚慰謝料の相場と請求の実務」(学陽書房・中里和伸著)

監修

河合・藤井法律事務所

代表弁護士河合基裕

法律事務所に相談に来られる方は、思わぬトラブルに巻き込まれ、不安を抱えておられることと思います。当事務所では、ご相談者さまとの信頼関係を大切にし、ともによりよい解決を目指して参ります。 お力となれるよう精一杯、務めて参りますので、よろしくお願い申し上げます。

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